生産性を上げるということは(品質を落とさずに)効率をUPさせることである!
現状の問題点
効率UPの方法としては、各工場の問題点に対応して実に様々であると思われる。製作のライン工程が悪いところは、工場内レイアウトを変更すれば流れは良くなるだ ろうし、工場内の整理整頓が行き届いていない工場では、探す無駄、準備する無駄などをなくすよう整理整頓を心がけるだけで、かなり、生産性、効率がUPするだろう。会社を構成する社員の一人一人が、利益を上げる、そのためにはどうすれば良いのか、そう思わせるのが経営者、管理者の責務である。
だがしかし、日本を覆っているこの不況のなかで、工場内レイアウトにも問題がない、整理整頓は行き届いている、社員教育にも力を入れている、だが足りない。こういった場合、向上を目指すにはどうすればいいのか。
とかく、鉄骨業界は馴れ合いや無駄が多い。「その件に関しましては後日・・」、「とにかく工期に間に合わせてください。お金の取り決めはその後で・・」等々。さらには、同じような建築物、トン数の物件があるとして、仕口部にハンチが存在するもの、しないものでもトンあたり単価が同じである、ということが今の現実である。かかる費用、手間がどれだけ違うのか、設計士、ゼネコン、元請け会社はもっと現場、工場を知らなければならないし、工場サイドはなんでもハイハイではなく、実状をアピールしていかなければならない。そういったことを、社内でよく検討した結果、とにかくこれからは ”無駄”をなくすことである、をテーマに動いてみようということになった。それが、この厳しい時代を乗り越えるための道程であるのだから。
改善点
会社の仕事において、無駄というのは結構あるものである。工場内レベル、個人レベルでの無駄というものは、社内教育で改善していくものなので、ここでは全社的なレベルでの無駄をいかに改善していくか、がテーマになる。その結果、会社の実質的な効率UPとして、床書き現寸及びそれに伴う現寸検査の無駄が取りざたされた。
無駄と言い切るには少々語弊があるかもしれないが、現況のCADシステムの普及を考えると、床書き現寸の必要性が疑問視されるのは当然であり、仕事としてはCADで行っているのだが、現寸検査時に床書きで行いたいということに納得がいかなかい。それはなにも手を抜くというわけではなく、CADによる現寸検査ではダメなのかということである。いうならば、見せるためだけの現寸検査に、例えば100トンぐらいの単純 構造建築物に6人工(全構連:見積・積算マニュアル 参照)かかるわけで、単価がさがり、仕事量をこなさなければならない現況に、床書き現寸検査は工数的、コスト面から考えても無駄ではないだろうか。しかし、これには我々工場側にも問題がある。床書き現寸検査を行いたいと言われれば、ハイ、わかりました、いつにしましょうか、などと答えてきたのはファブの側である。これからの時代はなにも考えないファブは生き残れない。そこで、現寸検査を行う際、CADによる現寸検査を行いたい旨を、会社として 相手方にはっきり伝えていくことにし、どうしても床書きでと言ってくる場合は、床書きでなければならない理由を問うとともに、CADによる現寸検査の概要を説明し、了承をもらえるようにしなければならない。そしてそのために、「床書き現寸検査からCADによる現寸検査へ」という説明文と、「CADによる現寸検査要領書」を作成し、先方に納得してもらえる形を整えていくことにした。勿論、これまでの床書きと違い、実際の現寸検査時において、CADシステムに不慣れな人、画面上での検査になってよくわからない人もいるだろが、どんな人にも理解してもらえるように、こちらの担当員もしっかりと説明及び対応ができるように訓練していく。
床書き省略、CADによる現寸検査の実施によるプラス面は、金額的には先にも述べた単純構造建築物約100トンの物件で、単純計算で約144,000円(全構連:見積・積算マニュアル 参照)が見込まれるが、今現在の単価ではこの金額をはじきだせない。あくまでこれは現寸検査費として、CAD現寸検査における工場としての経費削減と考える。現実に考えれば、6人工かかるとしてその6人工分他の仕事にあたらせることができるので、床書きを行うと行わないでは、差し引き12人工分の仕事量、生産量が増えるということになり、生産性の向上、効率UPとなるわけである。また、現寸検査そのものをとってみても、CADによる場合の手順及び対応がしっかりしていれば、寸法の確認等においても時間が短縮でき、現寸場への移動時間等も省略できる。勿論、原寸大の仕口部や柱脚部において確認したい事項がある、と言われてもすぐに用意できる(プロッター出力)。前図面からの変更箇所がある場合も、図面レベルで即対応可能である。
現寸検査に限らなければ、通常の仕事においてはほとんどCADシステムで行っているので、やはり床書き現寸検査の有無を問うのは当然なことであり、まだまだ認識されないこの実状をアピールしていかなければならない。
改善効果
このプラン(床書き現寸検査からCADによる現寸検査への移行)の発動は99年2月の社内会議からである。当初は、床書き現寸検査ではなくてCAD現寸検査にしませんか、という言葉だけでの先方への打診であった。説明するということもままならず、なかには、ああ、いいよ、ということもあったが、基本的には現寸検査は現寸場において、床書きでするものといった感じで押し切られていた。その後、幾度かの社内会議において、「CADによる現寸検査要領書」を作成するべきという方針をうち立て、同時に、なぜCAD現寸か、を明確に理解してもらえるように、「床書き現寸検査からCADによる現寸検査へ」の作成に着手した。この「床書き現寸検査から~」の内容としては、ここまで述べてきた説明とほぼ同じであり、「CADによる現寸検査要領書」の方は、自社で使用しているCADシステムに合わせ、直角度、スパン等の寸法確認の方法等を盛り込み、担当員がオペレーターとなってCADシステムそのものの操作手順を紹介する形で作成した。こうして文章化することが、相手先からの本当の理解を得るために重要だった。口先だけでCADがどうのと言っているうちは、こちらが本気かどうかも相手にはわかってもらえかった。しかし、明文化することにより、それだけで相手は真剣に目を通してくれたのである。その結果、これらの要領書等の一応の完成が、5月半ばだったのだが、実質6~9月の自社請負の工事において、4つの物件で床書きからCADへの移行に成功した(中の1物件は床書き、CADの指定がなかったので要領書等を提示し、最初からCADによる現寸検査で承認をもらった)。トン数の違いはあるが、会社としては工数削減、床書き分のコスト(人件費も含む)削減、それら分プラス側へのの効率UPに繋がったのである。
結果リポート
実施期間 | 1999年6月~1999年9月 | ||
工数 | 各物件における現寸検査における床書きの省略 | ||
工事トン数 | 時間(人工) | 金額(床書き) | |
時間 金額 | 約25トン 約130トン 約15トン 約30トン | 2人工 8人工 1人工 2人工 | 36,000円 187,200円 21,600円 43,200円 |
*人工はその分すべてプラスとなる。
*金額は床書きを行った場合。